美術初心者だから「名画は嘘をつく」を読む

「名画は嘘をつく」の読書感想文。

 

美術初心者のサカミです。

名画ってどういう視点で鑑賞すればいいの?

最近は芸術全般に触れることが増えてきたのに、知っていることはせいぜい義務教育で覚えたわずかなことだけである。ムンクの叫びはムンクが叫んでいるのではないってことくらいは知っている、あとナポレオンが白馬で峠越えてないとかそんな知識。

逆にいえば先入観なくフラットに読める。

今は絵画を見た目だけの印象で見ていて、それは「感性」だけでしか作品を見ていないということになる。作品の背景とかどういう文脈にあるのかといった前知識をつければ鑑賞も楽しくなるだろうから、そこんとこはっきりさせていこう。

 

 

感想

名画って呼ばれる一度は目にしたことのある絵画の解説をわかりやすく教えてくれる。「そうなのか!」っていうのがたくさんあり楽しく読める。名画に嘘があるという内容だが、一緒に芸術家の紹介も兼ねているので、内容理解としてはかなり優しい。美術を読み解くための導入としては良い本だと思った!

美術、とっつきにくい印象で今までいたけど読んでみて、画家の人間性なんかを知ることができたのでより身近に感じられるようになったんじゃないかな。名画を描いた画家もお偉いさんから絵の発注があって描いている。み、身近エピソードだ……画家って自分の描きたいタイミングで好きなように描いているイメージがあったからちゃんと仕事としてやってんのだなあ……。

解説読んで、むしろ美術ってこんなにハイコンテクストなのか、感性だけで見たら絶対わからんだろっていうのだらけだ。ルーベンス≪4人の哲学者≫より「名画に写る4人のうち2人は死んでいて、背景の4本の花のうち咲いている/つぼみであることが生死を象徴している」←わからん。いやわかるんだけど解説なければわからんでしょ……。ただこの解説があることで、名画が読めるようになる。わかるっていうのは楽しい。自分の知識だけでは認識し得ないことが名画から読み取れるようになる。

多種多様な名画が掲載されていて、広く浅い知見が得られる。のでやっぱり初心者向けって感じ。美術史とか体系的なことはともかくとして、名画とその解説で、自分の好きな画家や名画を見つけられるかもしれない。全編フルカラーなのもうれしい。

 

 

個別印象に残った名画

エドゥアール・マネの≪フォリー・ベルジェールのバー≫が好き。他に紹介されている≪鉄道≫も好き。デッサンでの矛盾があっても表現のためにそれを採用したというのがいい、そこに共感する。

 ムンクの≪叫び≫、≪ムンクの叫び≫ってタイトルじゃないし、叫んでるのはムンクじゃないし、絵の男はムンクだけど耳塞いでるだけだし。読むまで本当にムンクが叫んでる絵だと思ってた。本当に知らなかったのだけど有名な話なんだろうか。情報アップデートしたからもう間違わないぞ。

ルーベンススイカズラの木陰のルーベンスとイザベラ・ブラント≫二人組絵としての構図がとても好き。きれい。

ルーベンス≪マリー・ド・メディシスの生涯 アンリ4世とマリーの代理結婚≫王族の結婚絵である。ルーベンスも参列していたが、この絵では結婚する二人の後ろで顔をのぞかせている。ルーベンスのサインのようなものであるそうなのだけど、彼だけカメラ目線で自己主張しているのかなり面白いので定期的に見たくなる。

ルノワールのエピソード、晩年リウマチの痛みに耐えて絵を描いていたころの取材にて、「そのような手でどうやって制作するのか」に対しての答えが、「ペニスで」。この時代でもペニスは”面白”らしい、本当に?

ゴーギャン、自身の絵が観念や夢といった象徴的なものを表現しているので一般には理解し難いものであるっている自覚があるようで、自分の作品世界を理解させるのに紀行文など文章でも表現したというエピソード、本でも触れてるけどとても現代的だと思った。こうありたい。

 ジェンティレスキ≪ホロフェルネスの首を斬るユディト≫構図がもうとにかく抜群にかっこいい。

ヘラルト・ダウ≪玉ねぎを刻む少女≫17世紀オランダ風俗画におけるメイド絵は男主人を誘惑するものとして描かれていたとか。もうメイド絵が出てきたらエロい目でしか見られなくなった。メイドはエロい。フェルメールの≪牛乳を注ぐ女≫は例外だそうだけど。

 

 

作品背景を知れば面白くなるってことがわかったので、今後絵画を鑑賞するなら感性で見るに加えて、知識で読み取ることも一つ楽しみが増えてうれしい。名画の見方について知識大幅アップデートできたけど西洋史とか思想とか、そういう大本のところを知りたい。そうすればある程度解説がなくとも推測できるようになるのではないでしょうか。

これから美術学びたい人読んで、超わかりやすい。